SA

最終更新日:2009/08/13

 

従来表記

スィ

ローマ字表記

/sa/

/si/

/su/

/se/

/so/

カタカナ表記

参考文字

巳,シ

この変更に伴って,サ行から追い出された「シ」は,シャ行で用いられる.

本項では,新カタカナ表の/sa/行を補完した.網掛けされている「サスセソ」は,従来の表記法と変更ない.変更点は,英語表記では/si/,従来のカナ表記で「スィ」と発音する文字を新しく作成したところである.カタカナは,伝統的に漢字の一部分あるいは全体を変形して作成した経緯があるので,ここでもそれにならって「巳」を参考にした.また,従来の「シ」と形が類似していたほうが好ましいと考え,「シ」も参考にしている.この文字を作ったことにより,オシム監督の母国語に近い発音で,彼を呼んであげることができる.また,第2の用例は,メキシコの首都であるが,「メキ…」ではなく「メク…」としたほうが,より英語の発音に近い.なお,原語(スペイン語)では,そもそもメキシコではなくメヒコと呼ばれている.

新しい/si/のカタカナのモデルを,「巳」にした.現代中国語のピンインでは,「巳」を/si/とローマ字表記するからである.ただし,これは,中国人が/si/と(勝手に)定めたものであるため,日本人が聞くと「スィ」と聞こえずに,どちらかといえばくぐもった「スー」に聞こえる.実際には,国際音声記号で定めるところの[sɿ]であり,日本語の「スィ」でも「スー」でもなく,日本語では表現できない発音である.ピンインが/si/である漢字は他にも「食」「司」などがあるが,そのほかの多くは,あまり日本人になじみがない.なぜ,「巳」を選んだかといえば,どちらのほうが加工しやすいかなどで判断しているが,最終的には作者の恣意的なものである.なお,日本人は「巳」を「シ」「ジ」「ミ」などと発音する.

究極的には,我々の祖先が,古代中国語の一部をカタカナに変形していったように,古代中国語において/si/と発音される字から新しいカタカナを作りたかった.これを行うことができれば,我々の祖先が行ったタスクにより近い形でトレースすることができた.しかし,資料不足(力不足)により,モデルとした漢字は現代中国語とそのピンインとした.

また,/si/のカタカナを作成する際に,「シ」に似せることも意識した.われわれは,文章を高速で処理しているから,現在読んでいる個所よりだいぶ先を予測して前もって言葉を補いながら読んでいる.われわれは,逐一記号を見ながら読んでいない.したがって,「シ」に似ている字形であるほど,その脳内の準備(プライミング)を邪魔しないので読みやすいだろうと考えた.しかし,字が似ているほど,認知的な混同(コンフリクト)を起こしやすくもあるので,似すぎてもいけない.